Music Characters

 


「SF・ホラー・ロック小説」の巻

前回まで8回に亘って展開してきたシリーズ「(欧米)ポップスファンから見た和製ポップスの流れ」はいかがでしたでしょうか Jポップの流れ、特に欧米からの影響を私なりの見解を持って著してきましたが、幾分“独断と偏見”で進行したシリーズでした。悪しからずです。それにしてもオヤジになると頑固になって、“独断と偏見”で押し通す傾向にはあります。もっとも、この手の著述は良い意味での“独断と偏見”で押し通さないとどんずまりになって先に進まなくなるので、まあ〜いいとしますか(一人で納得)。で、今回からはシリーズではなく通常の単発ミュージックコラムになります(これも独断)。

さて、それで今回のテーマはと考えるのですが、いやはやシリーズ化に慣れてしまって色々とテーマ選択に迷ってしまいました。そんなこんなで、今回はミュージシャンにスポットを当てるのではなく、今までとはチョット趣向の違うテーマを設定してみました。それが「ロック小説」です。「ロック小説」とは何ぞや と言う人は多々おられると思います。

文字通りロックミュージックをテーマにしたフィクション(小説)で、これは著名なロック・ミュージシャンの伝記とかロック・ミュージシャンが著した小説とかいうものではなくて、ロックそのものを主役にした小説なのですが、(一部のロック・フリークやマニアは別にして)日本ではあまり馴染みのない分野でしょう。この分野は、欧米(特にアメリカ)では結構人気があって様々な本が出版されているようです。残念ながら日本では翻訳本があまり出ていない状況もあり(出してもそんなに売れないんでしょうネ)、馴染みがないのはあたり前ですかナ。



terada-saurus
<生態>
●俗名:テラダザウルス(爬虫類ではありません。いちおう霊長類の仲間です。)
●別名:ミスター パラドックス
●生息地:夜の盛り場、主に歌舞伎町あたり。
●習性:もちろん夜行性。チェック柄の擬態で人の目を惑わす。
●性格:良く言えば凝り性、実態はかなりの粘着質。パラノイア()とも・・・・・。
●血液型:・・・謎。
●年齢:不明、気は若い。
●特技:毒舌(始まったら止らない独断場)。
●苦手なもの:ゴマすり、お世辞。(するのも、されるのも)
●飼育上の注意:できるなら近寄らない方が無難。ハマる覚悟が必要。

 
ほんでもって本題に入りますと、私がこの日本では数少ない翻訳「ロック小説」なるものに出会ったのは今を去ること10年程前、仕事の合間に新宿のとある書店に立ち寄った時(私はこう見えても読書家なのです)、その本のタイトルが妙に気になり手にしたのが始まりでした。本のタイトルは「グリンプス(Glimpses)」といい、このタイトル、実は私の好きなイギリスの60年代のロックバンド「ヤードバーズ」の最後のアルバム(「LITTLE GAMES」で後のレッド・ツェッペリンのジミー・ペイジがリードギタリストであった)に収録されていた曲名の一つだったというのもあるのですが、その帯のキャッチコピー「60'sロックSFファンタジイ」に惹かれたのもありました。

んッ、60'sロックにSFファンタジイとは もしかするとビートルズのアニメ映画「イエロー・サブマリン」のようなティーンエイジャー向けのお伽話チックな内容なのかも と、創造は膨らむばかりでますます興味津々。で、え〜い、ままよッとばかり、ついに(他の本と一緒に)購入に至りました(えッ、ここまでの話が長い、失礼)。

てな訳で、作者はルイス・シャイナーというアメリカの(SF)作家。何でもこの著作で“世界幻想文学大賞”を受賞しているそうです。東京創元社の文庫本で、かなりの長編。内容は・・・というと80年代後半のアメリカ(テキサス辺り)に暮らす、しがないステレオ修理屋を営む主人公がある日突然に妙な能力に気がつきます。60年代のロックに思いを巡らしただけで当時未完のままだった幻の曲が突然スピーカーから流れだし、彼はこれを録音し、ブーツレッグ(海賊版)にして売り込んだり、果ては実際にその時代にタイムスリップして未完の曲やアルバムを完成させようとする・・・・。という一種のタイムトラベルSFなのです。この話、かなりのロックフリーキーや当時のロックミュージックの事情に詳しい人ならばニンマリしながら読み進むことでしょう。かくゆう私めもハマッテしまいました。何しろその幻の未完の曲やアルバム制作の完成作業対象に選ばれたのは、ドアーズ、ビーチ・ボーイズ、ジミ・ヘンドリックスなのですから。ちなみに「グリンプス(Glimpses)」の意味は“チラチラ見る”だそうです。

この本の導入部は、当時のファンの間で話題であったビートルズの実質最後のアルバム「レット・イット・ビー」の幻のオリジナル・バージョン(ジョージ・マーティン、プロデュースのもの)を復活させ、海賊版業者を狂喜乱舞させるところから始まります。これで恐らく“ロックオタク”に対するツカミはOKでしょう。この後は主人公の能力がエスカレートし、当時にタイムスリップして先のロック・ミュージシャンの未完の曲やアルバムを完成に導く過程を詳細に描写しているのですが、その創造力が素晴しい。ドアーズのジム・モリソン(彼らの未完の曲は「セレブレーション・オブ・リザード」)、ビーチ・ボーイズのブライアン・ウィルソン(彼らのは未完のアルバム「スマイル」)そしてジミ・ヘンドリックス(彼のは幻のアルバム「ファースト・レイズ・オブ・ニュー・ライジング・サン」)。当時の彼らや取り巻きの人物描写、その苦悩をまるで然も見てきたように描ききっています。

不思議なことにこの本が出た後、ビートルズを始めとするこれらのミュージシャンの未完の曲や幻のアルバムは相次いでCD化され、リリースされました。もしかするとこの話はフィクションではなくドキュメンタリーだったのかも知れません・・・。と、ま〜冗談はさておき、この「ロック小説」、この他にも今をときめくホラー作家スティーブン・キングを筆頭に多数の作家が書き下ろしたオムニバスロック・ホラー本「ショック・ロック(扶桑社刊)」があります。これもまた面白いので皆さんもどこかの書店で見かけたら是非ご一読のほどを。こちらの「ショック・ロック」はロックファンではなくとも結構楽しめると思いますヨ(またまた独断)。それにしても日本の出版社もこの種の本をもっと出して欲しいものです。
では、今回はこのへんで、また次回・・・・・。

 

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