10連奏のレコードプレーヤーの思い出。

 先日も大きな台風(観測史上、首都圏最大だとか)に洗われた歌舞伎町でした。そんな雨の中、ご来店いただいたお客様、ホントにありがとうございました心より御礼申し上げます(感謝)。
さて、前回は「熱帯夜」続きで熱に犯されてしまったのか、つい過激なことを口走ってしまいましたが(反省・・・・・笑)、今回はいつもに戻って、エッセイらしくいきたいと思います。尚、過激・辛口がお好みの方は、10月18日発売の雑誌「サイゾー」で、私の連載ページが出来ましたので、そちらもご覧くださいませ。(ヘヘッ、宣伝でした。)
さて、今回のネタは、「10連奏のレコードプレーヤー」なのですが、皆様はこれがどんなシロモノかご存知でしょうか CDではありませんよ、レコードですよ。1960年代から、一般家庭にもレコードプレーヤーが普及したと思うのですが、当時のステレオは、サイドボードほどもある足付の木箱に、プレーヤー、ラジオ、スピーカーが一式セットされたもので、客間にウヤウヤしく鎮座していたものです。レコードの片面の演奏が終わると、トーンアームが自動的に戻るという機械仕掛けが面白く、A面の最後の曲のサビになるころにやおら立ち上がって、アームが戻るのをいつも見ていたように思います。さて、10連奏というのは、そういう仕掛けの上に成り立っているものでして、かように画期的()なものだったのです。
レコードというもの、片面づつしか演奏できないもので、20〜30分毎にレコードを取り替えるという作業からは逃れられない宿命がありました。(もっとも、次は何を掛けようかとレコードジャケットをあれこれ引っ張り出し、曲をイメージしながら1枚を選ぶ・・・という作業はとても楽しいもので、若き日に通ったJazz喫茶のマスターの、レコードを選んで針を落とすという一連の仕草や、音が途切れた一瞬の静寂に、オトナの渋さを感じていたものでしたが・・・・・余談でした。)
さて、そのレコードの取っかえ引っかえから開放されるべく生まれたのが、レコード10連奏システムです。親にねだりにねだって、やっと買ってもらったのは1964、5年頃でしょうか。私にとっては宝物で、1日中聞いていたくて学校をサボったことも、1度や2度ではありませんでした。
仕掛けは簡単といえば簡単(・・・に見える。だけど素人にはわからない技術が必要だったかも・・・・・。)ですが、ターンテーブルの心棒が異様に長く(30センチくらい)そこにレコードを聴きたい順番にセットするのです。最初の1枚の演奏が終わると、トーンアームが戻り、次の1枚がふわりと上から降りてくる、そしてトーンアームがレコードの端にそっと落ち、演奏が始まる。これを放っといても10回繰り返してくれるわけです。単純計算でレコード片面20分×10枚=200分(約3時間)は、お気に入りの音楽の世界に浸れるわけですな。これが嬉しかったのなんの 反面、そのためにはレコードが揃っていなければ面白くなく、それが私のレコード収集癖に火を付けた大きな原因のひとつです。
いやぁ、あれには重宝しました。自家用BGM演奏機ともいうべき10連奏サマのおかげで、勉強するフリをしながら好きなだけ音楽を聴けたし、親の留守中に誘い込んだ同級生の女の子を口説く()時も、無粋に立ち上がる必要もなかったし・・・・・(笑)。今であれば、iPodとかMP3とか、アルバム100枚分の曲をタバコくらいの大きさのなかに詰め込めるものがあり、科学の驚異的な進歩を肌で感じますが、便利さにはない情緒・情景が、1台の機械のおかげで、私の胸に刻まれています。
まだテープレコーダーには手が届かなく、手軽にMY BGMなど作れなかった時代、彼女と過ごす時間のために、10枚のレコードを(盛り上げるタイミングを考えながら・・・笑)選ぶ時間が、なんと幸せだったことか・・・・・
 
2004/10/16
株式会社フレーバーハウス
てらだ ひでお
 
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